2024年1号「技能と技術」誌315号
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図4 遅すぎる流動速度図5 速すぎる流動速度図6 成形機射出部の断面(略図)図7 円盤を成形-16-例えば,円盤形状の製品の中央からプラスチックを射出して,成形することを考えてみる。射出速度が一定の場合,射出される時間当たりのプラスチックの体積も一定となる。すると図7の左のように流動速度は徐々に落ちることになる。図7の右のように流動速度を一定にするためには,射出速度は徐々に上げる必要がある。4.6 流動速度の確認方法(一例)成形に必要なプラスチックの量が90cm3の製品の場合,以下の手順で流動速度を確認する。図8では,中央の円(水色)からプラスチックを流している。①成形機から金型へ,10cm3のプラスチックを流して成形を行う。②流す量を20cm3,30・・90cm3と増やす。③それぞれの時に,どこまでプラスチックが流れたかを製品図に記録する。④線と線の間が広い場所は,流動速度が速いと判断できる。逆に狭い場所は,遅いと判断できる。図8を見ると,Bの部分が速くAの部分が遅いということになる。4.3 遅すぎる流動速度(図4)流れが遅すぎると,流れに対して固化層の成長が早いことになる。これにより上記では回り込めていたプラスチックが回り込むことが難しくなり,隙間ができる。これを繰り返すことで,製品の表面に細かな波のような模様が発生する。(「フローマーク」と呼ばれる不良である。)4.4 速すぎる流動速度(図5)流れが速すぎると,とある距離だけプラスチックが金型に触れることなく飛び出す。その後,遅れてきたプラスチックと合わさるのだが,時間差があるため完全に融合せず跡が残る。(「ジェッティング」と呼ばれる不良である。)4.5 射出速度とは成形条件の中に「射出速度」という設定があるが,これは成形機のプラスチックを押し出す部品(「スクリュー」と呼ばれる)の速度設定である。(図6)つまり「流動速度=射出速度」ではない。流動速度が極力一定になるよう,射出速度をいろいろ変化させた成形条件を設定する必要がある。

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